僕の職場の仲間達は、
妻が双子を妊娠中と聞いて、
「ちょっと待って、無理じゃない?」
「今でさえ、限界でしょう」
「医局やめるの?」
みたいな、哀れみの目で僕を見始め、
しばらくすると、
遅々として進んでいない僕の研究に、
手を差し伸べてくれる上司がポツポツ現れた。
(ありがたい…)
たまたま、職場には、子供3人の親が多く、
今までは「子供3人もいて大変そうだなぁ」
なんて他人事に考えていたんだが、
一気にゴボウ抜きしてしまった(誤用)。
そして、日に日に妻のお腹は大きくなり、
明らかに仕事が出来るような全身状態では無くなったのに、
変わらずエネルギッシュに働こうとするので、
いつかどこかで立ち行かなくなるのではと危惧していたら、
ほら見たことかと、妻が緊急入院になった。
入院期間は1ヶ月〜3ヶ月という。
僕の、ワンオペの始まりである。
朝、鬼のような形相で子供たちを起こし、
食事を食べさせ支度をし、保育園に預けた後、
光の速さで職場まで行き、
外来や手術を巻きに巻いて16時までに終わらせ、
上司に土下座した後、光の速さで帰って、
子どもたちを迎えに行き、
風呂に入れ、食事を食べさせ、
死んだように3人で寝る。
入院で暇な妻から大量のLINEが来ているが、
申し訳ないが、LINEなんて読んでいる暇は無かった。
全て、既読スルーか、未読スルーだった。
ただ、今になって思えば、
毎日戦場のような毎日は、
結構楽しかった。
今までは、
仕事が遅くなった時は、なんだかんだ
妻が子供たちを見てくれていたし、
どこか無意識に任せて安心していたんだが、
その妻が居ない今、自分しか
子供たちを守れる人間がいないので
こちらも毎日本気になるわけだが、
その本気が伝わるのか、
子供たちは愛情として僕に返してくれるのだ。
今までも子供たちは最高に可愛かったが、
3人での生活の間は、
悶絶するほど可愛かった。
そして、そんな生活をなんとか
破滅せずに続けられたのは、
僕の無理なお願いを毎回快く聞いてくれた
オペ室スタッフや、
外来の人数を調整してくれた外来ナースや、
非常識なまでに仕事しない僕に対して、
今は仕事のことは気にするなと温かい言葉をかけてくれた
職場の上司たちの存在があったからで、
本当に感謝したいと思う。
保育園の先生たちからは、毎日
「お父さん、今が踏ん張りどきですね」
「がんばってくださいね」
などと声をかけて頂いて、それもとても心強かった。
思っていたよりも、周りは優しいなと感じた
ワンオペ生活だった。