ぼくの妻は、女医

フルタイム医師夫婦による、4児の子育てカルテ

ぼくの妻は女医 ~フルタイム医師夫婦による、4児の子育てカルテ~

妻が緊急入院した 〜異常事態 その4〜

僕の職場の仲間達は、

妻が双子を妊娠中と聞いて、

「ちょっと待って、無理じゃない?」

「今でさえ、限界でしょう」

「医局やめるの?」

みたいな、哀れみの目で僕を見始め、

しばらくすると、

遅々として進んでいない僕の研究に、

手を差し伸べてくれる上司がポツポツ現れた。

(ありがたい…)

 

たまたま、職場には、子供3人の親が多く、

今までは「子供3人もいて大変そうだなぁ」

なんて他人事に考えていたんだが、

一気にゴボウ抜きしてしまった(誤用)。

 

 

そして、日に日に妻のお腹は大きくなり、

明らかに仕事が出来るような全身状態では無くなったのに、

変わらずエネルギッシュに働こうとするので、

いつかどこかで立ち行かなくなるのではと危惧していたら、

ほら見たことかと、妻が緊急入院になった。

入院期間は1ヶ月〜3ヶ月という。

 

僕の、ワンオペの始まりである。

 

 

朝、鬼のような形相で子供たちを起こし、

食事を食べさせ支度をし、保育園に預けた後、

光の速さで職場まで行き、

外来や手術を巻きに巻いて16時までに終わらせ、

上司に土下座した後、光の速さで帰って、

子どもたちを迎えに行き、

風呂に入れ、食事を食べさせ、

死んだように3人で寝る。

入院で暇な妻から大量のLINEが来ているが、

申し訳ないが、LINEなんて読んでいる暇は無かった。

全て、既読スルーか、未読スルーだった。

 

ただ、今になって思えば、

毎日戦場のような毎日は、

結構楽しかった。

 

今までは、

仕事が遅くなった時は、なんだかんだ

妻が子供たちを見てくれていたし、

どこか無意識に任せて安心していたんだが、

その妻が居ない今、自分しか

子供たちを守れる人間がいないので

こちらも毎日本気になるわけだが、

その本気が伝わるのか、

子供たちは愛情として僕に返してくれるのだ。

 

今までも子供たちは最高に可愛かったが、

3人での生活の間は、

悶絶するほど可愛かった。

 

そして、そんな生活をなんとか

破滅せずに続けられたのは、

僕の無理なお願いを毎回快く聞いてくれた

オペ室スタッフや、

外来の人数を調整してくれた外来ナースや、

非常識なまでに仕事しない僕に対して、

今は仕事のことは気にするなと温かい言葉をかけてくれた

職場の上司たちの存在があったからで、

本当に感謝したいと思う。

保育園の先生たちからは、毎日

「お父さん、今が踏ん張りどきですね」

「がんばってくださいね」

などと声をかけて頂いて、それもとても心強かった。

思っていたよりも、周りは優しいなと感じた

ワンオペ生活だった。