医局は面倒な事も多い。
あっちに飛ばされ、こっちに飛ばされ、
事務的な仕事も多いし、なにより薄給である。
医局なんて飛び出して独立したい!
とも思うけど、
実際には医局には良くしてもらっている方だ。
教育的な面も、研究的な面も、
本当にお世話になっている。
何人かいる教授陣も、なんだかんだ好きだ。
ただ、何よりも医局にいて幸せなのは、
後輩を指導できるところだ。
今指導している3年目の新米外科医は、
カドのあるやんちゃな女医だが、
ようやく簡単な手術なら形になってきた。
一曲ある手術だと、手が止まり、
少し手伝ってやると、悔しがる。
「やっぱり自分はまだまだです」なんて言いながら
確かに成長していく様子を
頭をぶつけながら間近で感じられるのは、
先輩としてかなり幸せなことだ。
次から次にやってくる後輩を指導できる。
これが、医局に所属している醍醐味だ。
何年か前、尊敬する外科医の一人に、
「先生、うちの病院に来てくださいよ」
と頼んだことがあるが、その先生は
「後輩の指導をしないといけないから」
と言って断られた。
カッコよかった。
先日、久しぶりに連絡したその先生から
「うちに手術しに来てくれないか」と頼まれた。
報酬は、1日で12万円だった。
ただ、頼まれた日は例の新米外科医との手術だった。
「申し訳ないです、後輩の指導があるので」
と断ったが、当事者になって初めて理解できた。
後輩の指導にまさる幸せはない。
しかも、幸運なことに、
僕の周りには素直で可愛い後輩が多い。
真摯に向き合っていれば、
まっすぐに成長してくれる後輩ばかりだ。
最近では、僕の話を素直に聞いてくれないのは
妻くらいだ。