僕は外科医で、妻は内科医だが、
僕は急性期を、妻は慢性期患者を主に診ている。
対応する患者層がまるで違う。
例えば、「私の死後は献体に提供したい」
との申し出をたまに頂くが、
意外と外科を受診する患者さんに
こうした献体希望の方は少ない。
そこで、定期的にそういった対応をしている
妻に相談すると、
「こういう対応してこうすればいいのよ、バカっ」
なんて色々と教えてくれる。
(バカは余計だろと思う)
こういう診療科の違う医者が
パートナーとしているのは、
心強いメリットの一つだと思う。
膵癌末期の患者さんが合併症で動けなくなり、
「もう来週の温泉旅行は行けないですかね?」
と言うので、慌てて
「いやいや、まだキャンセルしないで」
と言って、最終的にはなんとか対症療法を間に合わせ
温泉旅行に行かせた。
結局、患者さんは旅行の直後に亡くなり、
その後は家族にも会えず、モヤモヤしていたんだが、
リハビリ科のスタッフがわざわざ話しに来てくれ、
最期の様子を報告してくれた。
無理して旅行に行かせたのは正解でした、と。
家族も本人もとても喜んでいた、と。
良かった。
すごく良い人で、思い入れのある患者さんだったから、
ずっと心に引っかかっていたんだが、
他のスタッフも同じ気持ちだった様だ。
スタッフと話せて、僕は勝手に、
プチ偲ぶ会が出来たと思っている。
たまに、こんなふうに
ポツポツと思い出す患者さんがいる。