ぼくの妻は、女医

フルタイム医師夫婦による、4児の子育てカルテ

ぼくの妻は女医 ~フルタイム医師夫婦による、4児の子育てカルテ~

女医は中発作の夫を診ない

一昨日の夕食中、急に呼吸困難になり、

いや、こう書くとプシコっぽいから

あんまり気軽に呼吸困難とか書きたくないんだけど、

今思い返すと、最近、咳喘息が続いていたところに、

喘息中発作が重なったんだと思う。

で、あれ?まずいなと、慌てて

ロイコトリエン受容体拮抗薬と、

H1受容体拮抗薬を内服したんだが、

当然すぐに効果が出るはずもなく、

緊急用に置いてあったサルタノールを吸入したが、

やたらタキるのみで、効果が無かった。

 

いわゆる体動困難になって一人苦しんでいたら、

寝室から息子の寝かしつけを終えた妻がやってきて、

おぉ、助かった…と思った矢先、

「なんなのもう…」みたいな感じで

あからさまに迷惑がられた。

「なんでご飯全部食べてないのよ…」とか

「病気移さないでよ…」とか

異常に冷たい言葉をかけた後、

「も〜!救急車呼ぶ?」と投げやりに言われた。

 

このご時世、救急車呼んだところで、

若い男性の呼吸困難なんてどの病院も取らないし、

どうせたらい回しにされて

コロナの検査だけさせられて

最終的にプシコ扱いされて終わるだけなんて

わかってるから、

なんとか

「プシコ扱いされるだけだからいい…」

とだけ言葉を絞り出したら、

「そりゃそうでしょ!」

と、さらに冷たい言葉を浴びせられた。

 

しまいには、

「自分で病院行ってきなよ!」

「私の病院には行かないでよ!」

「その状態で家に帰ってこないでよ!」

「帰ってきても鍵開けないから!」

なんて、信じられない言葉をかけられ、

このままじゃ妻に殺される!と思い、

老人のようにゼェゼェヒューヒュー言いながら

寒い外に逃げ出すように飛び出した。

 

で、外の空気を少し吸っていたら

2時間くらいして落ち着いてきたので、

少し休んでから深夜に帰宅した。

 

喘息持ちの人は理解できると思うけど、

喘息発作って、わりとトラウマレベルの

呼吸苦・恐怖心を感じる。

その横で、女医である妻が

なんとも冷たい対応をしてきたのは、

それこそトラウマレベルでショックだった。

 

幸い、それ以降は定時内服と吸入を始めたので、

中発作は出てないけど、

改めてこの一件を思い出すと、

妻と結婚したのは

正しい選択だったのだろうかと

本気で悩んでしまった。

 

女医と結婚すればいざという時は安心

なんて、少なくとも我妻の場合は誤りだ。

 

というか、逆の立場だったとしたら、

医療従事者の一人として

とてもあんな対応は出来ないと思うんだけど、

どうして妻はあんな態度を取ったんだろう。

 

まぁ結婚ってこんなもんかと思って

トイレに入りながら冷静に今後を考えた。

また、同じ様な発作が出たり、

あるいは僕が別のなにか病気にかかった際、

妻が今のまま変わっていなければ、

妻はなんの手も差し伸べてくれない。

ならば、自分の身は自分で守れるように

対策を考えなければならんなぁ。とか。

 

ただ、翌朝、食器を洗いながら、

もう一度この一件を思い出していたら、

なんだか無性に腹が立ってきて、

こっちは何も悪い事していないのに、

なんでこんな冷遇されなきゃならんのだ

とフツフツと怒りが湧いてきて、

妻がいつか倒れたところで、

僕は冷たくしてやるんだと、

チタン製のカップを洗いながら心に誓った。

 

食器を洗い終えると、

妻がひび割れた指を見せてきて

「ねぇ!指が割れて痛いの!お薬塗って!」

と言ってきたので、ここぞとばかりに

「ふん。救急車呼ぼうか?」

「この傷が治るまでうちに帰ってこないでね」

「鍵開けないから」

と言ったら、妻が

「あぁ、なるほど、それで怒ってたのね」

と、妙に納得して満足した顔をしていた。

 

腹がたったが、

ちゃんと薬は塗ってやった。

 

リッツ・カールトン大阪

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